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月桂樹の芽

『月桂樹の葉SS』のネタ帳です

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2026.07.05 (Sun) Category : 

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マジプラス+@ソクーロフ4

2010.06.15 (Tue) Category : memo

固定電話が鳴った。キッチンに居る##NAME1##が向かう前に、
「私が出るよ」
博士が受話器を取った。
「ソクーロフです。……いや、構わないよ。解った……うん……では」
それだけ言って博士は電話を切った。
急病の連絡なら症状を聞く。そうではい場合は警備からの要請だ。
##NAME1##は反射的に「アイヴィーさんから?」と尋ねてしまった。
「いいや。副司令官からだったが」
しまった、と##NAME1##は思った。
よく考えればアイヴィー相手にしては話し方が優しい。
先程、アイヴィーに休日出勤の連絡が来ていたから、つい彼からかと思い込んでしまった。
「##NAME1##? どうして、アイヴィーからだと思ったんだね?」
##NAME1##は少々しどろもどろになりながら、
追憶の塔に呼ばれたみたいだったからアイヴィーさんかと思ったと話した。
「成程。確かに、追憶の塔へのお招きの電話だった。さて、ではまた出掛けてくるよ」
意外にもそれ以上、追求されなくて##NAME1##はホッとした。
「帰りは遅くなるかもしれないから、##NAME1##は先に休んでくれて構わないよ。
私の帰りを待っていてくれるのは嬉しいけれど、そのせいで君の身体」
ドアに向かう背中を追いかけ、お見送りをする。
「##NAME1##」
ドアを開ける前に、博士は振り向いた。
「すまない。せっかく今宵は私の好物を用意してくれたのに。今夜の分は明日頂くから」
すっと##NAME1##の頬に手を添える。唇に口付けを落とした。
「行ってくるよ」

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マジプラス+@ソクーロフ3

2010.06.14 (Mon) Category : memo

アイヴィーが帰った後、##NAME1##は晩御飯の支度を始めたが、
彼の安否が気になって、料理の段取りを失敗してしまい、美味しくできるか自信がない。
テレビを付けても、この島のニュース番組は、今週のイベント紹介やグルメ情報など、
のどかな地域ニュースを伝えるばかりで、侵入者情報に関しては一切報じないのだ。
警備組織が島に住む全ての人間を守る為に、日夜働いていても、
何十人、何百人の侵入者から島を守ったとしても、その情報が表に出ることはない。
今こうしている間にも、アイヴィーは血を流しているかもしれないのに。
司令官に選ばれた彼の実力が、並でないのは解っているつもりだが、
さっきまで、ここに居て、笑っていた彼と、二度と会えなくなる可能性は、ゼロではない。


「ただいま」
エビチリが完成する前に旦那様が帰ってきてしまった。
料理を続けながら、「ごめんなさい。まだ晩御飯の用意ができていなくて」と謝った。
「いや、それは構わないんだがね」
博士の顔が見られない。
「脈が早い。緊張している、ね?」
博士に手首を掴まれた。博士の親指が##NAME1##の脈を計っている。
結婚後、何度もやられたことだが、まだ慣れない。
手首を捕らえていた手が人差し指に向かう。絆創膏を巻いた指だ。
「どうしたんだい? この指」
グラスを割ってしまったことだけを話した。その時、誰が来ていたかは伝えずに。
「そうか。これを選んだのは良い判断だったね。
これは主に医療関係者の間で、売買されるもので、一般にはあまり出回っていないものなんだ。
高機能の絆創膏だから、市販品の絆創膏より早く治してくれるよ」
絆創膏にも高機能なものと、そうでないものがあるのかと少し感心する。
「##NAME1##、一度、剥がしても良いかい?」
既に指は、しっかり捕らえられている。
「##NAME1##の綺麗な指に、ガラス片が残っていないか、この目で確かめたいんだ。いいね?」
YESしか選択肢がない雰囲気で、いつのまにか##NAME1##は頷いていた。
「剥がすよ?」
ピリピリと絆創膏が端から剥がされていく。超スローペースだ。
これならひと思いにペリッとやられたほうがマシではないだろうか。
そう思っていると、心を読まれたようなタイミングで、
「ゆっくり、丁寧に剥がさないと、皮膚組織を痛めてしまうからね?」
ただ絆創膏を取られるだけで、どうしてこんなにドキドキしなくてはいけないんだろう。
心臓が壊れそうだ。思わず漏れてしまった声を聞いて、博士が笑っている。
今すごく楽しそうな博士がコワイ。コワイのに。
イヤと言わないどころか、感情が高ぶり過ぎて、
エクスタシーに近いものを感じてしまっている自分は、もうどうしようもない。
絆創膏を剥がされたあとは、物凄い接写で人差し指を観察され、丁寧に丁寧に治療された。
「これでいい。明日また絆創膏を替えてあげるからね?」
##NAME1##には自分で絆創膏を替える権利がないようだ。


マジプラス+@ソクーロフ2

2010.06.14 (Mon) Category : memo

「へーえ。中は結構、現代的なんだねー」
とりあえずリビングに案内し、ロングソファに座って貰った。
アイヴィーは興味深げにキョロキョロしている。
##NAME1##は買ってきたものを、手早く冷蔵庫に入れ、コーヒーの準備に取りかかる。
そこで博士が好きなコーヒー豆を買い忘れたことに気が付いた。
##NAME1##はインスタントで十分なのだが、博士はお気に入りの豆があるのだ。
今、家にあるのは##NAME1##用のインスタントコーヒーだけだ。大きなボトルを見せながら、
これしかないんですけど良いですか、とあまり意味のない質問をする。
「うん。あ、そのコーヒー、俺んちにあるのとおんなじだ。それ、安いしウマイよね」
アイヴィーとは感覚が近いようだ。ちょっと嬉しかった。
グラスに入れたコーヒー色の粉を水で溶かす。自分で作る時より氷を二個多く入れた。
テーブルに置こうとした時、派手に水を零した音と派手にガラスが割れた音がした。
グラスを床に落としてしまった。アイヴィーの服を濡らさなかったのは幸いだったが、
アイスコーヒーが一杯分まるまる零れ、フローリングにコーヒー色の平べったい水たまりができた。
##NAME1##はグラスの破片を拾おうとした。
「##NAME1##ちゃん、手で触っちゃダメ!」
人差し指から血が滲んでいた。
「俺が片付けるから、##NAME1##ちゃんは――イタッ」
床に着いた手が跳ねる。
グラスが落ちた位置より距離があるのに、そこにも破片が飛んだらしい。
アイヴィーの右の薬指から赤い雫が見えている。
二人とも指に怪我をしてしまった。顔を見合った二人は、同時に笑っていた。

気を付けて周囲を掃除したあと、指の手当てをした。
##NAME1##は立派な救急箱を開ける。博士が自宅用として用意してくれたものだ。
確か一番上に絆創膏が入っていた筈である。
以前、##NAME1##が包丁で指を少しだけ切ってしまった時、
博士はここから絆創膏を出してくれた。
大した傷ではなかったのに、まるで大怪我のような扱いをされたっけ。
絆創膏はたくさんあった。これなら二枚くらい使っても大丈夫だろう。
##NAME1##は自分の人差し指に巻いたあと、アイヴィーの指にも絆創膏を巻いた。
「……あ、ありがと、##NAME1##ちゃん」##NAME1##は彼の分のアイスコーヒーを入れ直す為、キッチンに向かった。

アイスコーヒー片手に他愛のない話をした。
アイヴィーが傍に居ると、いつの間にかリラックスしていて、なんだか安心できた。
二人で笑い合っている時間は、平和そのもので、とても心地の良い時間だった。
「ちょ、あれっ? 今何時!?」
気が付くと、窓の外は暗くなり始めていた。
「ヤバ、もうこんな時間か。長居しちゃってゴメン。俺、もう帰るね。
下手するとソクちゃんが帰ってきちゃう時間だし」
それはマズイ。
「##NAME1##ちゃん。あの、相談なんだけど、今日、俺がここに来たこと、
ソクちゃんにはナイショにしない? なんか怒られそうだし」
そうですね、と答えた。旦那様は、##NAME1##のこととなると束縛欲が強い。
次の瞬間、アラームのような音が聞こえた。
アイヴィーはその音で腕時計を見た。
デジタル時計は時刻ではなく地図のようなものを映していた。
「ありゃりゃあ」とアイヴィーが笑う。
続けて、電子音が鳴った。アイヴィーが携帯電話を取り出す。
サブディスプレイに表示された文字を確認してから、
「お呼び出しか。##NAME1##ちゃん、ちょっと電話出ても良いかな?」
はい、と答える。
「ありがと」と笑ったあと、一瞬で彼の顔つきが僅かに変わったように感じた。
普段の表情と変わらないようにも見えるが、
少しだけキリッとした隙のない雰囲気になったというか、
『休日モード』から『仕事モード』にスイッチングした瞬間を見た気がする。
「うん……うん……なら、俺もそっち行くわ。今、旧市街だから。……はーい。じゃ」
##NAME1##に聞こえたのはそれだけだったが、島に侵入者が来たという連絡のようだ。
侵入者を排除するのが警備組織の仕事であり、彼が最高責任者であるとは言え、容赦ない。
聞くまでもないことなのに##NAME1##は思わず、これからお仕事に行くんですか、と尋ねていた。
「ん、まあね」
週に一度のお休みの日なのに、とつい言ってしまう。
「しょうがないよ、そういうお仕事だし。
でも、今日のお客さんは大分空気読めてるほうだと思うよ?」
アイヴィーは立ち上がり、ドアに向かう。
死と背中合わせの仕事に向かう人は、笑顔を見せながら、
「それじゃあね、##NAME1##ちゃん。コーヒー、ごちそうさま」

マジプラス+@ソクーロフ1

2010.06.14 (Mon) Category : memo

##NAME1##は新市街まで夕食の買い物に来ていた。
聖アルフォンソ島の新市街には大型のショッピングモールがある。
その一階には食品フロアがあり、品物を見ながら夕食のメニューを決めようと思っていた。
鮮魚コーナーの前を通った時、特売品が目に入った。
今日はエビが安いようだ。それを見て、メニューが決まった。よし。今夜はエビチリ。
「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」
はい、と答える。
「そっか。俺もだよ。週に一度の買い出し。今日休みだから」
ショッピングカートには、一週間分らしい食材が入っていた。
そう言えば、今日の彼はネクタイをしていない。
ラフなシャツにダメージジーンズが似合ってる。
「##NAME1##ちゃん、今日の晩御飯は……エビ?」
はい。今夜エビチリにしようと思って、と言いながら、
まだ手に持ったままだった剥きエビを買い物カゴに入れる。
アイヴィーはポリポリと頬を掻きながら、
「……そっか。ソクちゃん、エビチリ好きだもんね」
独り言のようにポツリと呟く。
「なんか、##NAME1##ちゃんは、ホントにソクちゃんのお嫁さんなんだね」
一か月前、##NAME1##はソクーロフ博士と結婚した。
現在は旧市街にある新居で、ラブラブの新婚生活を送っている。
「あ、ねえ、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーに呼ばれて、顔を上げる。
「ここまで何で来たの? バス? 歩き?」
バスです、と答えた。
「良かったら、家まで車で送ろっか?」


買い物を終えた後、アイヴィーと二人で駐車場に来た。
彼の車は、メタリック・ブラックのオープンカー、BMWカブリオレだった。
「##NAME1##ちゃん、荷物、貸して? 後ろに入れるよ」
荷物を受け取ったあとは、タクシードライバーだからか、自然に車のドアを開けてくれた。
シートは黒の本革だ。後ろで荷物を入れているアイヴィーの独り言が微かに聞こえた。
「##NAME1##ちゃんと会えるなら、アストンマーチンで来るんだったかなー」

アイヴィーが運転席に座る。
にこりと笑いながら、タクシードライバーの台詞を口にした。
「じゃーお客さん、どちらまで?」
最近やっとソラで言えるようになった住所を伝えた。
「えっ、##NAME1##ちゃんち、あそこなの!?
あの辺めっちゃ高級住宅街じゃん。スゴイなあ」
そうらしいことは##NAME1##も薄々気がついていた。エンジンがかかる。
「じゃ、出発しまーす」
ショッピングモールの駐車場を出て、街道を走る。
オープンカーだけあって、風を肌で感じる。爽快だ。
青空の下を走るオープンカーが、こんなに気持ち良いものだとは思わなかった。
派手な車が視界に入った。白とピンクの水玉。目立つワゴン車が広場に停まっている。
「ああ、あれはアイスクリームの移動販売車だよ」
丁度、なんだろうと思っている時に、アイヴィーが答えをくれた。
「生徒を乗せてる時に、あの車見かけると、『追いかけろー!』ってよく言われるんだ」
生徒にも人気があるらしい。
「##NAME1##ちゃんも食べてみる? マージナルプリンス御用達のアイスクリーム」


中央に噴水がある広場。
その入口付近にピンクと白の水玉模様のワゴン車が停まっている。
アイスクリームの移動販売車に乗っていたのは、白いキャップを被ったおじいさんだった。
よく日焼けしている。60歳前後だろうか。実年齢より若々しく見えるタイプかもしれない。
「いらっしゃい、ああ、アイヴィー。毎度どうも」
「こんちは、アイスじーさん。えっとー、俺はクッキー&クリーム。##NAME1##ちゃんは?」
アイスクリームは横に10、縦に2列並んでおり、計20種類。
悩む。どれも美味しそうだが、あれにしようか、これにしようか。
「おやおや。アイヴィー、今日はプリンスじゃなくて、
プリンセスを連れてきてくれたのかい?
やっとカノジョができたんだねえ、いやあ、羨ましいもんだ」
「えっ!? ち、違うよ。彼女はソクーロフ博士のおヨメさん」
「そうなのかい? あ、そういやマージナルプリンス達が騒いでたっけ。
俺達のプリンセスが博士に奪われたとか、洗脳されたとかなんとか。
あ、お嫁さん本人の前で失礼なこと言っちゃったかな?
洗脳されて結婚なんてある筈ないよねえ」
##NAME1##は日本人的微笑を見せる。
「ん? 博士は今お仕事中だろ? ってことは、
お二人さん、アレかい? 不倫ってヤツかい?」
「ちょ、ヘンな想像しないでよ! 俺達はさっきたまたま会っただけなんだから!」
「ハハハッ。何、慌ててんだい、アイヴィー。
大丈夫さ。アイヴィーにはいつも世話になってるからね。
今日、お二人さんを見たことは忘れてあげるよ」
おじいさんは八重歯を見せながら笑ってた。

「はいよ」
しわくちゃの手からアイスクリームを受け取る。
シングルで頼んだ筈が、コーンの上には、アイスがダブルで乗っていた。
「##NAME1##ちゃん。それはこの店の名物みたいなモンでね。
じーさんが勝手にもういっこ乗せちゃうんだよ、ほら、俺のもダブルになってるでしょ?」
本当だ。クッキー&クリームの上にエスプレッソのアイスが乗っている。
「俺、マージナルプリンスと何度もここに来てるんだけどさあ、
じーさんが選んだアイスって、あいつらが嫌いな味だったことが一度もないんだよ。
フシギとさ、『それとどっちにしようか迷ってた』って言う奴が多いんだ。
え? ##NAME1##ちゃんも? マジで? もう、じーさん、なんで分かんの?」
「ハハハッ。いつも言ってるだろ? 企業秘密だよ」
「絶対教えてくんないんだもんなー」
「毎度ありー。お嬢さん、今度はダンナさんと一緒においで」
そう言えば、博士とアイスを食べたことは一度もなかった。
「##NAME1##ちゃん、あそこで食べよっか?」
噴水を囲むように配置されているベンチに二人で座った。
外で食べるアイスクリームは格別だ。おじいさんが選んでくれた味も美味しい。
##NAME1##は隣を見る。男の人がアイスクリームを食べている姿はなんだか可愛らしい。
白いアイスクリームを舐める赤い舌先がチラリと見えた。
「そういや俺、久し振りだわ、ここのアイス食べるの。てゆうか、二回目?」
それは意外だ。
「マージナルプリンスがアイス食べてる時は、タバコ吸ってるから」
成程。
「しかも女の子とアイスなんて、この島に来てからは一度もなかったし。
え? まさか。全然モテないよ。同僚もお客さんも野郎ばっかだしねー」
しかし、客観的に見てもアイヴィーはモテる要素を幾つも持っているし、
##NAME1##自身もアイヴィーは非常に魅力的な男性だと思う。
こんなにイケメンで性格も良いし、この若さで役職はトップなのだ。
博士に籠絡されなければ、彼を好きになっていたかもしれないと思うほどだ。
六年の間、島に居て、言い寄ってくる女性は一人も居なかったのだろうか。
彼は老若男女問わず島の人みんなに好かれている。
来るもの拒まず、誰とも親しい関係が築けるタイプだと思う。
けれど、##NAME1##の勘違いかもしれないが、
一定のラインより奥へは、誰も寄せ付けない雰囲気を感じるのだ。
プライベート過ぎる質問は受け付けないかんじがある。特に過去に関するもの。
例えば、島に来る前までは、どこで何をしてたのか、とか。


「うーわ。昔の貴族とか住んでそうなおうちだね」
アイヴィーは三階建ての高級マンションを見上げている。
「こんなとこに住んでたんだねー。ソクちゃんってば教えてくんないんだもん」
歴史ある建築物が並ぶ旧市街。
ここに##NAME1##とソクーロフが暮らす新居があった。
三階までアイヴィーが持ってくれた荷物。部屋の前で手渡された。
「今日は、##NAME1##ちゃんと会えたおかげでイイ休日になったよ。ありがと」
##NAME1##もアイヴィーと会えたことはラッキーだったし、楽しかった。
このままさよならしてしまうのは淋しい、できればもっと一緒に居たいと感じている自分が居た。
「あのさ、##NAME1##ちゃん。もし、また会えたら一緒に……」
アイスでも食べに行こうね、おそらくそう続けたかったのだろう。
けれど、アイヴィーは続く言葉を飲み込んだ。
「いや、ゴメン、何でもない」
彼も##NAME1##と同じ気持ちなのだろうか。
「それじゃあね」
気が付くと、##NAME1##はアイヴィーを呼び止めていた。振り向いた金髪が揺れる。
「えっ? なあに、##NAME1##ちゃん」
なんて言えばいいんだろう。二秒という短い間、##NAME1##は必死に考えた。
苦し紛れにでてきた言葉は、車で送ってくれたお礼にコーヒーでも飲んでいきませんか、だった。
そう言われたアイヴィーは目をぱちくりしていた。数秒の沈黙のあと、彼は口を開いた。
「……イイの?」
##NAME1##は頷く。
「じゃ、じゃあ、一杯だけ、ご馳走して貰っちゃってもイイかな?」
彼も拒まなかった。

マジプラス+@ソクーロフ3

2010.06.13 (Sun) Category : memo

アイヴィーが帰った後、##NAME1##は晩御飯の支度を始めたが、
彼の安否が気になって、料理の段取りを失敗してしまい、美味しくできるか自信がない。
テレビを付けても、この島のニュース番組は、今週のイベント紹介やグルメ情報など、
のどかな地域ニュースを伝えるばかりで、侵入者情報に関しては一切報じないのだ。
警備組織が島に住む全ての人間を守る為に、日夜働いていても、
何十人、何百人の侵入者から島を守ったとしても、その情報が表に出ることはない。
今こうしている間にも、アイヴィーは血を流しているかもしれないのに。
司令官に選ばれた彼の実力が、並でないのは解っているつもりだが、
さっきまで、ここに居て、笑っていた彼と、二度と会えなくなる可能性は、ゼロではない。

「ただいま」
エビチリが完成する前に旦那様が帰ってきてしまった。
料理を続けながら、「ごめんなさい。まだ晩御飯の用意ができていなくて」と謝った。
「いや、それは構わないんだがね」
博士の顔が見られない。
「脈が早い。緊張している、ね?」
博士に手首を掴まれた。博士の親指が##NAME1##の脈を計っている。
結婚後、何度もやられたことだが、まだ慣れない。
手首を捕らえていた手が人差し指に向かう。絆創膏を巻いた指だ。
「どうしたんだい? この指」
グラスを割ってしまったことだけを話した。その時、誰が来ていたかは伝えずに。
「そうか。これを選んだのは良い判断だったね。
これは高機能の絆創膏だから、市販品の絆創膏より早く治してくれるよ」
絆創膏にも高機能なものと、そうでないものがあるのかと少し感心する。
「##NAME1##、一度、剥がしても良いかい?」
既に指は、しっかり捕らえられている。
「##NAME1##の綺麗な指に、ガラス片が残っていないか、この目で確かめたいんだ。いいね?」
YESしか選択肢がない雰囲気で、いつのまにか##NAME1##は頷いていた。
「剥がすよ?」
ピリピリと絆創膏が端から剥がされていく。超スローペースだ。
これならひと思いにペリッとやられたほうがマシではないだろうか。
そう思っていると、心を読まれたようなタイミングで、
「ゆっくり、丁寧に剥がさないと、皮膚組織を痛めてしまうからね?」
ただ絆創膏を取られるだけで、どうしてこんなにドキドキしなくてはいけないんだろう。
心臓が壊れそうだ。思わず漏れてしまった声を聞いて、博士が笑っている。
今すごく楽しそうな博士がコワイ。コワイのに。
イヤと言わないどころか、感情が高ぶり過ぎて、
エクスタシーに近いものを感じてしまっている自分は、もうどうしようもない。
絆創膏を剥がされたあとは、物凄い接写で人差し指を観察された。



博士に電話が来る

アイヴィーさんから?と尋ねた。
「いいや。副司令官からだったが? どうして、アイヴィーからだと思ったんだね?」
追憶の塔に呼ばれたみたいだったからアイヴィーさんかと思って……
と、少々しどろもどろになりながら答えた。
「成程。確かに、追憶の塔へのお招きの電話だったよ」
意外にもそれ以上、追求されなくてホッとした。



博士が追憶の塔に向かう

「どうしたんだ、その指」

「えっ!? あ、あのー、さっき、お仕事中にちょっと、やっちゃって」
「ほう。珍しいな、実力派の司令官にしては」
「い、いやー、そんなの買い被り過ぎだよー」
「傷口、私が診てやろうか?」
「いやいやいや! もう全然痛くないし、
ソクーロフ先生に診て貰うほどじゃないからホント!
俺なんかより、お客さん達の相手お願いしてもいいかなっ!?」
「ああ、そうだったな」

マジプラス+@ソクーロフ2

2010.06.13 (Sun) Category : memo

「うーわ。昔の貴族とか住んでそうなおうちだね」
アイヴィーは三階建ての高級マンションを見上げている。
「こんなとこに住んでたんだねー。ソクちゃんってば教えてくんないんだもん」
歴史ある建築物が並ぶ旧市街。
ここに##NAME1##とソクーロフが暮らす新居があった。
三階までアイヴィーが持ってくれた荷物。部屋の前で手渡された。
「今日は、##NAME1##ちゃんと会えたおかげでイイ休日になったよ。ありがと」
##NAME1##もアイヴィーと会えたことはラッキーだったし、楽しかった。
このままさよならしてしまうのは淋しい、できればもっと一緒に居たいと感じている自分が居た。
「あのさ、##NAME1##ちゃん。もし、また会えたら一緒に……」
アイスでも食べに行こうね、おそらくそう続けたかったのだろう。
けれど、アイヴィーは続く言葉を飲み込んだ。
「いや、ゴメン、何でもない」
彼も##NAME1##と同じ気持ちなのだろうか。
「それじゃあね」
気が付くと、##NAME1##はアイヴィーを呼び止めていた。振り向いた金髪が揺れる。
「えっ? なあに、##NAME1##ちゃん」
なんて言えばいいんだろう。二秒という短い間、##NAME1##は必死に考えた。
苦し紛れにでてきた言葉は、車で送ってくれたお礼にコーヒーでも飲んでいきませんか、だった。
そう言われたアイヴィーは目をぱちくりしていた。数秒の沈黙のあと、彼は口を開いた。
「……イイの?」
##NAME1##は頷く。
「じゃ、じゃあ、一杯だけ、ご馳走して貰っちゃってもイイかな?」
彼も拒まなかった。


「へーえ。中は結構、現代的なんだねー」
とりあえずリビングに案内し、ロングソファに座って貰った。
アイヴィーは興味深げにキョロキョロしている。
##NAME1##は買ってきたものを、手早く冷蔵庫に入れ、コーヒーの準備に取りかかる。
そこで博士が好きなコーヒー豆を買い忘れたことに気が付いた。
##NAME1##はインスタントで十分なのだが、博士はお気に入りの豆があるのだ。
今、家にあるのは##NAME1##用のインスタントコーヒーだけだ。大きなボトルを見せながら、
これしかないんですけど良いですか、とあまり意味のない質問をする。
「そのコーヒー、俺んちにあるのとおんなじだ。それ、安いけどウマイよね」


グラスを割る。
二人とも指に怪我をする。

「##NAME1##ちゃん、手で触っちゃダメ!」
人差し指から血が滲んでいた。
「俺が片付けるから、##NAME1##ちゃんは――イタッ」



立派な救急箱を開ける。博士が自宅用として用意してくれたものだ。
確か一番上に絆創膏が入っていた筈である。
以前、##NAME1##が包丁で指を少しだけ切ってしまった時、博士はここから絆創膏を出してくれた。
大した傷ではなかったのに、まるで大怪我のように治療された。


二人とも絆創膏を巻く。




「ちょ、あれっ? 今何時!?」

「ヤバ、もうこんな時間か。長居しちゃってゴメン。俺、もう帰るね。
下手するとソクちゃんが帰ってきちゃう時間だし」

「##NAME1##ちゃん」

「あの、相談なんだけど、今日、俺がここに来たこと、
ソクちゃんにはナイショにしない? なんか怒られそうだし」
そうですね、と答えた。次の瞬間、アラームのような音が聞こえた。
アイヴィーはその音で腕時計を見た。
デジタル時計は時刻ではなく地図のようなものを映していた。
「ありゃりゃあ」とアイヴィーが笑う。
続けて、電子音が鳴った。アイヴィーが携帯電話を取り出す。
サブディスプレイに表示された文字を確認してから、
「お呼び出しか。##NAME1##ちゃん、ちょっと電話出ても良いかな?」
はい、と答える。
「ありがと」と笑ったあと、一瞬で彼の顔つきが僅かに変わったように感じた。
普段の表情と変わらないようにも見えるが、
少しだけキリッとした隙のない雰囲気になったというか、
『休日モード』から『仕事モード』にスイッチングした瞬間を見た気がする。
「うん……うん……なら、俺もそっち行くわ。今、旧市街だから。……はーい。じゃ」
##NAME1##に聞こえたのはそれだけだったが、島に侵入者が来たという連絡のようだ。
侵入者を排除するのが警備組織の仕事であり、彼が最高責任者であるとは言え、容赦ない。
聞くまでもないことなのに##NAME1##は思わず、これからお仕事に行くんですか、と尋ねていた。
「ん、まあね」
週に一度のお休みの日なのに、とつい言ってしまう。
「しょうがないよ、そういうお仕事だし。
でも、今日のお客さんは大分空気読めてるほうだと思うよ?」
アイヴィーは立ち上がり、ドアに向かう。
死と背中合わせの仕事に向かう人は、笑顔を見せながら、
「それじゃあね、##NAME1##ちゃん。コーヒー、ごちそうさま」

マジプラス+@ソクーロフ1

2010.06.12 (Sat) Category : memo

##NAME1##は新市街まで夕食の買い物に来ていた。
聖アルフォンソ島の新市街には大型のショッピングモールがある。
その一階には食品フロアがあり、品物を見ながら夕食のメニューを決めようと思っていた。
鮮魚コーナーの前を通った時、特売品が目に入った。
今日はエビが安いようだ。それを見て、メニューが決まった。よし。今夜はエビチリ。
「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」
はい、と答える。
「そっか。俺もだよ。週に一度の買い出し。今日休みだから」
ショッピングカートには、一週間分らしい食材が入っていた。
そう言えば、今日の彼はネクタイをしていない。
ラフなシャツにダメージジーンズが似合ってる。
「##NAME1##ちゃん、今日の晩御飯は……エビ?」
はい。今夜エビチリにしようと思って、と言いながら、
まだ手に持ったままだった剥きエビを買い物カゴに入れる。
アイヴィーはポリポリと頬を掻きながら、
「……そっか。ソクちゃん、エビチリ好きだもんね」
独り言のようにポツリと呟く。
「なんか、##NAME1##ちゃんは、ホントにソクちゃんのお嫁さんなんだね」
一か月前、##NAME1##はソクーロフ博士と結婚した。
現在は旧市街にある新居で、ラブラブの新婚生活を送っている。
「あ、ねえ、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーに呼ばれて、顔を上げる。
「ここまで何で来たの? バス? 歩き?」
バスです、と答えた。
「良かったら、家まで車で送ろっか?」


買い物を終えた後、アイヴィーと二人で駐車場に来た。
彼の車は、メタリック・ブラックのオープンカー、BMWカブリオレだった。
「##NAME1##ちゃん、荷物、貸して? 後ろに入れるよ」
荷物を受け取ったあとは、タクシードライバーだからか、自然に車のドアを開けてくれた。
シートは黒の本革だ。後ろで荷物を入れているアイヴィーの独り言が微かに聞こえた。
「##NAME1##ちゃんと会えるなら、アストンマーチンで来るんだったかなー」

アイヴィーが運転席に座る。
にこりと笑いながら、タクシードライバーの台詞を口にした。
「じゃーお客さん、どちらまで?」
最近やっとソラで言えるようになった住所を伝えた。
「えっ、##NAME1##ちゃんち、あそこなの!?
あの辺めっちゃ高級住宅街じゃん。スゴイなあ」
そうらしいことは##NAME1##も薄々気がついていた。エンジンがかかる。
「じゃ、出発しまーす」
ショッピングモールの駐車場を出て、街道を走る。
オープンカーだけあって、風を肌で感じる。爽快だ。
青空の下を走るオープンカーが、こんなに気持ち良いものだとは思わなかった。
派手な車が視界に入った。白とピンクのしましま。目立つワゴン車が広場に停まっている。
「ああ、あれはアイスクリームの移動販売車だよ」
丁度、なんだろうと思っている時に、アイヴィーが答えをくれた。
「生徒を乗せてる時に、あの車見かけると、『追いかけろー!』ってよく言われるんだ」
生徒にも人気があるらしい。
「##NAME1##ちゃんも食べてみる? マージナルプリンス御用達のアイスクリーム」


中央に噴水がある広場。
その入口付近にピンクと白のストライプ模様のワゴン車が停まっている。
アイスクリームの移動販売車に乗っていたのは、白いキャップを被ったおじいさんだった。
よく日焼けしている。60歳前後だろうか。実年齢より若々しく見えるタイプかもしれない。
「いらっしゃい、ああ、アイヴィー。毎度どうも」
「こんちは、アイスじーさん。えっとー、俺はクッキー&クリーム。##NAME1##ちゃんは?」
アイスクリームは横に10、縦に2列並んでおり、計20種類。
悩む。どれも美味しそうだが、あれにしようか、これにしようか。
「おやおや。アイヴィー、今日はプリンスじゃなくて、
プリンセスを連れてきてくれたのかい?
やっとカノジョができたんだねえ、いやあ、羨ましいもんだ」
「えっ!? ち、違うよ。彼女はソクーロフ博士のおヨメさん」
「そうなのかい? あ、そういやマージナルプリンス達が騒いでたっけ。
俺達のプリンセスが博士に奪われたとか、洗脳されたとかなんとか。
あ、お嫁さん本人の前で失礼なこと言っちゃったかな?
洗脳されて結婚なんてある筈ないよねえ」
##NAME1##は日本人的微笑を見せる。
「ん? 博士は今お仕事中だろ? ってことは、
お二人さん、アレかい? 不倫ってヤツかい?」
「ちょ、ヘンな想像しないでよ! 俺達はさっきたまたま会っただけなんだから!」
「ハハハッ。何、慌ててんだい、アイヴィー。
大丈夫さ。アイヴィーにはいつも世話になってるからね。
今日、お二人さんを見たことは忘れてあげるよ」
おじいさんは八重歯を見せながら笑ってた。

「はいよ」
しわくちゃの手からアイスクリームを受け取る。
シングルで頼んだ筈が、コーンの上には、アイスがダブルで乗っていた。
「##NAME1##ちゃん。それはこの店の名物みたいなモンでね。
じーさんが勝手にもういっこ乗せちゃうんだよ、ほら、俺のもダブルになってるでしょ?」
本当だ。クッキー&クリームの上にエスプレッソのアイスが乗っている。
「俺、マージナルプリンスと何度もここに来てるんだけどさあ、
じーさんが選んだアイスって、あいつらが嫌いな味だったことが一度もないんだよ。
フシギとさ、『それとどっちにしようか迷ってた』って言う奴が多いんだ。
え? ##NAME1##ちゃんも? マジで? もう、じーさん、なんで分かんの?」
「ハハハッ。いつも言ってるだろ? 企業秘密だよ」
「絶対教えてくんないんだもんなー」
「毎度ありー。お嬢さん、今度はダンナさんと一緒においで」
そう言えば、博士とアイスを食べたことは一度もなかった。
「##NAME1##ちゃん、あそこで食べよっか?」
噴水を囲むように配置されているベンチに二人で座った。
外で食べるアイスクリームは格別だ。おじいさんが選んでくれた味も美味しい。
##NAME1##は隣を見る。男の人がアイスクリームを食べている姿はなんだか可愛らしい。
白いアイスクリームを舐める赤い舌先がチラリと見えた。
「そういや俺、久し振りだわ、ここのアイス食べるの。てゆうか、二回目?」
それは意外だ。
「マージナルプリンスがアイス食べてる時は、タバコ吸ってるから」
成程。
「しかも女の子とアイスなんて、この島に来てからは一度もなかったし。
え? まさか。全然モテないよ。同僚もお客さんも野郎ばっかだしねー」
しかし、客観的に見てもアイヴィーはモテる要素を幾つも持っているし、
##NAME1##自身もアイヴィーは非常に魅力的な男性だと思う。
こんなにイケメンで性格も良いし、この若さで役職はトップなのだ。
博士に籠絡されなければ、彼を好きになっていたかもしれないと思うほどだ。
六年の間、島に居て、言い寄ってくる女性は一人も居なかったのだろうか。
彼は老若男女問わず島の人みんなに好かれている。
来るもの拒まず、誰とも親しい関係が築けるタイプだと思う。
けれど、##NAME1##の勘違いかもしれないが、
一定のラインより奥へは、誰も寄せ付けない雰囲気を感じるのだ。
プライベート過ぎる質問は受け付けないかんじがある。特に過去に関するもの。
例えば、島に来る前までは、どこで何をしてたのか、とか。

マジプラス+@ソクーロフ2

2010.06.11 (Fri) Category : memo

買い物を終えた後、アイヴィーと二人で駐車場に来た。
彼の車は、メタリック・ブラックのオープンカー、BMWカブリオレだった。
「##NAME1##ちゃん、荷物、貸して? 後ろに入れるよ」
荷物を受け取ったあとは、タクシードライバーだからか、ごく自然に車のドアを開けてくれた。
シートは黒の本革だ。後ろで荷物を入れているアイヴィーの独り言が微かに聞こえた。
「##NAME1##ちゃんと会えるなら、アストンマーチンで来るんだったかなー」

アイヴィーが運転席に座る。
にこりと笑いながら、タクシードライバーの台詞を口にした。
「じゃーお客さん、どちらまで?」
最近やっとソラで言えるようになった住所を伝えた。
「えっ、##NAME1##ちゃんち、あそこなの!? あの辺めっちゃ高級住宅街じゃん。スゴイなあ」
そうらしいことは##NAME1##も薄々気がついていた。
エンジンがかかる。
「じゃ、出発しまーす」
ショッピングモールの駐車場を出て、街道を走る。
オープンカーだけあって、風を肌で感じる。爽快だ。
青空の下を走るオープンカーが、こんなに気持ち良いものだとは思わなかった。
派手な車が視界に入った。
白とピンクのしましま。目立つデザインのワゴン車が広場に停まっている。
「ああ、あれはアイスクリームの移動販売車だよ」
なんだろうと思っている時に、アイヴィーが答えをくれた。
「生徒を乗せてる時に、あの車見かけると、『追いかけろー!』ってよく言われるんだ」
生徒にも人気があるらしい。
「##NAME1##ちゃんも食べてみる?
マージナルプリンス御用達のアイスクリーム」


移動販売車に乗っていたのは、白いキャップを被ったおじいさんだった。
よく日焼けしている。60歳前後だろうか。
実年齢より若々しく見えるタイプかもしれない。
「いらっしゃい、ああ、アイヴィー。毎度どうも」
「こんちは。えっとー、俺はクッキー&クリーム。##NAME1##ちゃんは?」
「おや? アイヴィー、やっとカノジョができたのかい?」
「えっ!? ち、違うよ。彼女はソクーロフ博士のお嫁さん」
「そうなのかい? あ、そういやマージナルプリンス達が騒いでたっけ。
ん? 博士は今お仕事中だろ? ということはお二人さん……」
「ちょ、ヘンな想像しないでよ! 俺達はさっきたまたま会っただけなんだから!」
「ハハハ。何、慌ててんだい、アイヴィー。大丈夫さ。
アイヴィーにはいつもマージナルプリンス達を連れてきてくれるお得意さんだし。
今日、お二人さんを見たことは忘れてあげるよ」


広場でアイスを食べる


「うーわ。昔の貴族とか住んでそうなおうちだね」
アイヴィーは三階建ての高級マンションを見上げている。
「こんなとこに住んでたんだねー。ソクちゃんってば教えてくんないんだもん」
歴史ある建築物が並ぶ旧市街。
そこに##NAME1##とソクーロフが暮らす新居があった。
三階までアイヴィーが持ってくれた荷物。部屋の前で手渡された。
「今日はありがと。##NAME1##ちゃんと会えたおかげでイイ休日になったよ」

「それじゃあね」
##NAME1##はアイヴィーを呼び止めた。振り向いた金髪が揺れる。
「えっ? なあに、##NAME1##ちゃん」
##NAME1##は言った。
車で送ってくれたお礼にコーヒーでも飲んでいきませんか、と。

「へーえ。中は結構、現代的なんだねー」


アイスコーヒーを出す。
インスタントしかないんですけど。
「そのコーヒー、俺んちにあるのとおんなじだ。これ、安いけどウマイよね」


グラスを割る。
二人とも指に怪我をする。


「ちょ、あれっ? 今何時!?」

「ヤバ、もうこんな時間か。長居しちゃってゴメン。俺もう帰るね。
下手するとソクちゃんが帰ってきちゃう時間だし」

「##NAME1##ちゃん」

「あの、相談なんだけど、今日、俺がここに来たこと、
ソクちゃんにはナイショにしない? なんか怒られそうだし」



「ただいま」
アイヴィーが帰った後、すぐに晩御飯の支度を始めたが、
完成する前に旦那様が帰ってきてしまった。

料理を続けながら、「ごめんなさい。まだ晩御飯の用意ができていなくて」と謝った。
「いや、それは構わないんだがね」

「脈が早い。緊張している、ね?」

「おや。どうしたんだい、この人差し指」


――そのコーヒー、俺んちにあるのとおんなじだ――




マジプラス+@ソクーロフ1

2010.06.11 (Fri) Category : memo

##NAME1##は新市街まで夕食の買い物に来ていた。
聖アルフォンソ島の新市街には大型のショッピングモールがある。
その一階には食品フロアがあり、品物を見ながら夕食のメニューを決めようと思っていた。
鮮魚コーナーの前を通った時、特売品が目に入った。
今日はエビが安いようだ。それを見て、メニューが決まった。よし。今夜はエビチリ。
「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」
はい、と答える。
「そっか。俺もだよ。週に一度の買い出し。今日休みだから」
そう言えば、今日の彼はネクタイをしていない。
ラフなシャツにダメージジーンズが似合ってる。
「##NAME1##ちゃん、今日の晩御飯は……エビ?」
はい。今夜エビチリにしようと思って、と言いながら、
まだ手に持ったままだった剥きエビを買い物カゴに入れる。
アイヴィーはポリポリと頬を掻きながら、
「……そっか。ソクちゃん、エビチリ好きだもんね」
独り言のようにポツリと呟く。
「なんか、##NAME1##ちゃんは、ホントにソクちゃんのお嫁さんなんだね」
一か月前、##NAME1##はソクーロフ博士と結婚した。
現在は旧市街にある新居で、ラブラブの新婚生活を送っている。
「あ、ねえ、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーに呼ばれて、顔を上げる。
「ここまで何で来たの? バス? 歩き?」
バスです、と答えた。
「良かったら、家まで車で送ろっか?」



旅情

2010.06.11 (Fri) Category : memo

シチリアの北西部パレルモ。
かつてシチリア王が暮らしていた古都であり、現在はシチリア第一の都市。
パレルモ空港に着くと、イタリア語で話しかけられた。
「ベンヴェヌータ・イン・イターリア」
こちらの言葉で『イタリアへようこそ』という意味ですよ。
以前そう教えてくれた本人に今回も同じ言葉で出迎えられた。
「お疲れ様です。お待ちしておりました、姫さん」
イタリアーノにしては爽やかな顔立ちをした男。
「フィオラノ。その呼び方、止めてって言ってるでしょ」
「ああ、すいやせん。ついクセで」
人当たりの良い笑顔を見せた。
「ベンヴェヌータと迎えるのもクセなのかな?」
こちらの男は穏やかなのに、どこか意地の悪い微笑み。
「おや。そちらの方は、イタリア語がお解りになるんで?
はは。今回はイタリア語にも気をつけなきゃダメですねえ」
「ベンヴェヌータはイタリア語で『ようこそ』という意味じゃないの?」と僕。
「意味はね。ただ、ベンヴェヌータは女性単数に向けて使う言葉なんだ。
男性単数の場合はベンヴェヌート。まあ、アンリは可愛いから、どちらでも」
「良くない。フィオラノ、次からは気を付けて」
「はは。すいやせん」
僕、アンリ=ユーグ=ド=サン・ジェルマンは、
聖アルフォンソ学院を三日休んで、南イタリアまで来た。
僕が経営してる投資会社の取引先と商談をする為だ。
僕を出迎えた人物は、ボディーガードを頼んでいるマンゾーニ家の舎弟、フィオラノという男だ。
そして今回は同行者がもう一人。余計なオマケが島から付いてきた。
聖アルフォンソ学院、神秘学担当教師オーギュスト・ボージェ。
今度シチリアに商談に行くと話したら、オーギュストが付いていくと言い出した。
久し振りにシチリア旅行がしたいとかなんとか。
学院に赴任する前は旅行が趣味だったらしいけど。
その趣味のせいか、彼は世界の主要な言語なら不自由なく話せた。
「で、今日は君一人? ディーノはどうしたの?」
「今の台詞、兄貴が聞いたら喜んだでしょうね」
「ディーノはどうしたの?」
「兄貴はちょいと……別の仕事ができましてね。代わりに自分がお出迎えに。
兄貴も夜には顔を見せると言っていました」
「別に見せに来なくてもいいけどね」
フィオラノが兄貴と呼んでいるのがディーノ・マンゾーニ。
シチリアマフィア、マンゾーニ家の次期ボス。
彼の顔立ちは、生粋のイタリアーノだ。残念なまでに。
空港から電車で移動し、パレルモのセントラル駅まで来た後は、
フィオラノが運転するフェラーリで、商談先のビルへ向かった。
ハンドルを握りながら、後部座席の僕達へこう話しかけた。
「ボージェ先生は、何の先生なんですか?」
「神秘学を担当しています」
「へえ。学校でオカルトの授業があるだなんて、初めて知りました。
どんなこと勉強するんです? やっぱ黒魔術とかピラミッドパワーとか?」
「の、勉強もしましたね」
今日が初対面である二人はオカルト談義で盛り上がる。
その間、僕は中世の面影を残す街並みを眺めてた。
「ああ。そうだ、姫さん」
運転手が何か思い付いた。
「せっかくシチリアにいらしたんだから、シチリアのオカルトでもお勉強して行きやす?
商談まで、まだお時間もありやすし」
「何か面白い物でもあるの?」
「へい。シチリアには、世界一の美少女がおりやす」
「美少女? それのどこか神秘学なの?」
「ロザリア・ロンバルド嬢のことかね?」
「へえ。さっすがオカルトの先生だ。ロザリアちゃんのこともご存知で」
「確かに彼女の美しさはシチリアが誇る神秘かもしれないね」
「誰なの、そのロザリアって」
「世界一美しい、2歳の少女だよ。約90年前からずっとね」
「何それ。その言い方じゃ、まるで不老不死みたいじゃない。
2歳の姿のまま今も生きてるみたいに聞こえるけれど?」
「そうだね。ある意味、不老不死なのかもしれない。彼女は2歳で時を止めたのだから」

「流石の姫さんも、チンプンカンプンみたいですね。これはとにかく見て貰わないと。
ところで姫さん。ロザリアちゃんに会う前にひとつ確認ですがね?」

「コワイのは平気なほうですか?」


カプチン会修道院

「何なの、ここは」
「地下墓所で、カタコンベと言います。ここには約2000体のミイラが安置されてます」


「ここ、撮影禁止なんだよね? 撮影できたら、ミイラの写真撮ってブログに載せるのに」
「ポストカードが売ってたから、それ買ってアップすれば?」


「ほんと、美少女だね。ミイラとは思えない」
「彼女より君のほうが綺麗だよ」
「やだ。こんなところで言わないで」
「本当なのに」





日中は商談
家族自慢される

アンリがオーギュストとの夕食時に家族自慢されたことを愚痴る
愚痴を微笑みながら聞いてあげるオーギュ

シチリア料理を食べながら
「あーあ。どうしてイタリアーノって、ああなんだろう」

「商談の最中くらいは、母親の料理自慢を止めて貰いたいよ」




ホテルの部屋に戻る

アンリがシャワーを浴びている間にディーノが訪ねてくる
「やれやれ。マジで部屋にオトコ連れ込んでるとはな」

「ここまでの年上好きだったとはなあ。つーか、親子ほど年離れてんだろ」
「こんばんは。君のこと、アンリから話は聞いているよ。
君がディーノ・マンゾーニ君だね?」
「俺もあいつから話は聞いてるぜ。今度の商談には先生がオマケで付いてくるってなあ」
「うん。初めまして。神秘学担当のオーギュスト・ボージェです。
いつもアンリがお世話になっています。あの子を守ってくれて、どうもありがとう」
「フン。親みたいなこと言うんだな?」
「可愛い教え子だからね。息子のようなものだよ」
「ふうん?」


「シャワー、上がったよ。君も入れば?」
バスローブ姿のアンリが登場

マジプラス+@ソクーロフ

2010.06.10 (Thu) Category : memo

##NAME1##は新市街まで夕食の買い物に来ていた。
聖アルフォンソ島の新市街には大型のショッピングモールがある。
その一階には食品フロアがあり、品物を見ながら夕食のメニューを決めようと思っていた。
鮮魚コーナーの前を通った時、特売品が目に入った。
今日はエビが安いようだ。それを見て、メニューが決まった。
よし。今夜はエビチリ。
「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」
はい、と答える。
「そっか。俺もだよ。週に一度の買い出し。今日休みだから」
そう言えば、今日の彼はネクタイをしていない。
ラフなシャツにダメージジーンズが似合ってる。
「##NAME1##ちゃん、今日の晩御飯は……エビ?」
はい。今夜エビチリにしようと思って、と言いながら、
まだ手に持ったままだった剥きエビを買い物カゴに入れる。
アイヴィーはポリポリと頬を掻きながら、
「……そっか。ソクちゃん、エビチリ好きだもんね」
独り言のようにポツリと呟く。
「なんか、##NAME1##ちゃんは、ホントにソクちゃんのお嫁さんなんだね」
一か月前、##NAME1##はソクーロフ博士と結婚した。
現在は旧市街にある新居で、ラブラブの新婚生活を送っている。
「あ、ねえ、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーに呼ばれて、顔を上げる。
「ここまで何で来たの? バス? 歩き?」
バスです、と答えた。
「良かったら、家まで車で送ろっか?」


メタリック・ブラックのオープンカー、BMWカブリオレだ。
「##NAME1##ちゃんと会えるなら、アストンマーチンで来るんだったかな」



「うーわ。昔の貴族とか住んでそうなおうちだね」
アイヴィーは三階建ての高級マンションを見上げている。
「こんなとこに住んでたんだねー。ソクちゃんってば教えてくんないんだもん」
歴史ある建築物が並ぶ旧市街。
そこに##NAME1##とソクーロフが暮らす新居があった。
三階までアイヴィーが持ってくれた荷物。部屋の前で手渡された。
「今日はありがと。##NAME1##ちゃんと会えたおかげでイイ休日になったよ」

「それじゃあね」
##NAME1##はアイヴィーを呼び止めた。振り向いた金髪が揺れる。
「えっ? なあに、##NAME1##ちゃん」
##NAME1##は言った。
車で送ってくれたお礼にコーヒーでも飲んでいきませんか、と。

「へーえ。中は結構、現代的なんだねー」

「ちょ、あれっ? 今何時!?」

「ヤバ、もうこんな時間か。長居しちゃってゴメン。俺もう帰るね。
下手するとソクちゃんが帰ってきちゃう時間だし」

「##NAME1##ちゃん」

「あの、相談なんだけど、今日、俺がここに来たこと、
ソクちゃんにはナイショにしない? なんか怒られそうだし」


ごめんなさい。まだ晩御飯の用意ができていなくて。
「いや、それは構わないんだがね」

「脈が早い。緊張している、ね?」

「おや。どうしたんだい、この人差し指」




マジプラス+@ソクーロフ

2010.06.09 (Wed) Category : memo

「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」


そう言えば今日の彼はネクタイをしていない。



皆の天使

2010.05.29 (Sat) Category : memo

「うわ、今日の晩ご飯はデザート付きだー!」
ウーティス寮のシェフが、ユウタの前に恭しく差し出したのは真っ白なケーキだった。
「ダークチェリーのレアチーズケーキでございます」
「美味しそう! アンリも居たら良かったのに。今日はお仕事でフランスに居るんだもんねー」
ジョシュア、アルフレッド、シルヴァン、ハルヤにもケーキが渡る。
「アンリは晩ご飯、何食べてるのかなー。あれ? どうしたの、ジョシュア」
「実は、アンリがフランスに行った理由は、仕事ではないんだよ。
お母さんのお墓参りに行ったんだ。今日が命日だから」
「お母様は、アンリを生んだ数日後に亡くなられたんでしたね」
「そうだったんだ……えっ、ちょっと待って。
じゃあ、アンリのお誕生日って、もう終わってるの!?」
「ああ。6月6日、すげー日に生まれたもんだよな」
「アンリのバースデーパーティーしてないじゃん!」
「ああ。してないな」
「なんで? 俺の誕生日の時はしてくれたのに!
シルヴァンの時もレッドの時もハルヤの時もバースデーパーティーしたじゃん!」
「それはさあ……」
アルフレッドはジョシュアに視線を送った。
その視線を受け止めて、ジョシュアは話し出した。
「すまない、ユウタ。俺達だって、アンリの誕生日を祝いたい気持ちは、ユウタと同じだよ?
だけど、アンリは自分の誕生日を喜ぶことができないんだ」
「どうして? 誕生日は皆に祝って貰えるし、お誕生日ケーキも食べられるのに!」
「アンリは、自分が生まれたせいで、お母さんを亡くしたと思ってる。
だから、ずっと自分の誕生日が嫌いなんだよ。
誕生日の話をすると、毎年アンリはすぐに心を閉ざしてしまうんだ。
『そんなことを覚えていても、何の得にもならないよ』って」
「ねえ、ジョシュア。アンリ、明日帰ってくるんだよね?」
「うん。夜には帰るって言っていたけれど?」
ユウタは席を立ち上がった。
「やろうよ! アンリの誕生日パーティー!
明日、アンリが帰ってきたら、サプライズパーティーしよう!」
「でも、アンリ、嫌がるかもしれないよ?」
「嫌がられたっていいよ! 俺がお祝いしたいからする!
自分の誕生日が嫌いなんて、そんなのダメだよ!
みんながパーティーしないって言うんなら、俺一人でもパーティーするからね!」
ジョシュアが目をぱちくりする。
「ユウタ……」
「よおっし! 俺は乗ったあ!」
アルフレッドがユウタの肩に腕を回す。
「抜け駆けなんてさせるかよ! 俺も混ぜろよな、ユウタ!」
「ハイハーイ! 僕も入れて下さーい! もちろんハルヤも参加しますよね?」
「大丈夫かなあ」
苦笑しながらも、否定しなかった。
「さあ、あとはお前だけだぜ、ジョシュア?」
皆がジョシュアを見つめる。
ユウタを囲むデッドプリンスの三人を見て、
「……やっぱり、すごいな、ユウタは」
ジョシュアは微笑んだ。
「俺も入れてくれるかい、ユウタ」

早朝ランニング2

2010.05.21 (Fri) Category : memo

翌朝4時45分に起床した。その後の予定は、5時に寮を出発、6時までには寮に戻る。
シャワーを浴び、朝の読書をしてから朝食に出る予定だ。
ランニングの時間は通常、ストレッチを含めて30分程度が適切だが、
今日は第一回目のランニングだから、かなり余裕をもったタイムスケジュールにした。
走るコースは昨夜、島の地図を参考に大体決めたが、
島の散策を兼ねて、実際の景色を見ながら、コースを考えていきたいと思っていた。
机に広げた地図を確認しながら、ランニングウエアに着替える。
色は上下とも黒。ノースリーブのランニングシャツに、短めのランニングパンツ。
このシャツは、肩に白のラインが入っている程度のシンプルなデザインだが、
吸水性と通気性に優れ、プロのランナーも使うウエアだ。
これに袖を通すのは三日振りだが、随分着ていなかったように感じる。
予定通り5時に部屋を出た。
寮の廊下を歩いている時は、誰とも擦れ違わなかった。皆まだ眠っているのらしい。
外に出ると、まだぼんやり明るい程度だった。
真夏だが、早朝だけあって、まだ暑くはない。早朝だけの特別な心地良さだ。
寮の前でストレッチをしたあと、クラウスは走り出した。
正門まで続く一直線。日中であれば人が行き交う道だが、この時間に居るのはクラウスだけだ。
月桂樹のアーチになっている通路を真っ直ぐ駆けていく。
鳥の声と自分の足音だけがする。
そう思っていたら、左前方からバサリと何かが落ちた音がした。
月桂樹の葉が生い茂る枝。それが丸一本、木から落ちたのだ。
葉が枝ごと落ちるなど、自然な現象とは考え難い。
誰か居るのか。クラウスは木の上を見上げた。
葉に紛れて、人影があった。その人物はクラウスに気付き、木から飛び下りた。
ハンチング帽を押さえながら降ってきて、慣れた様子で着地した。
生徒ではない。無精髭を生やした大人の男。クラウスより十歳程上だろうか。
「高いところから失礼致しました。葉や枝でお怪我はなさいませんでしたか?」
「怪我はしていません」
「安心致しました。ああ、ご挨拶が遅れましたね」
ハンチング帽を取って、胸に置く。
「私は森番のバロウズと申します。月桂樹や他の動植物の飼育、管理などを
担当させて頂いております。お見知り置きを」
「自分は、先日入学した高等部一年のクラウス・フォン・モールです。
よろしくお願いします、バロウズさん」
「バロウズで構いませんよ。貴方はマージナルプリンスなのですから。
ところで、そのお召し物、クラウス様も早朝ランニングですか?」
「はい」
「そうでしたか。行ってらっしゃいませ、クラウス様」
バロウズに見送られ、月桂樹の並木道を走って行く。
正門に着いた。門番に朝の挨拶をするとともに、
生徒手帳を提示し、これから学院周辺を走ってくることを伝えた。
朝食までには戻ること、今後も早朝ランニングをする予定であることも説明した。
「畏まりました。ご丁寧にご説明頂きまして、ありがとうございます」
門番の警備スタッフは、敬礼して見送ってくれた。
クラウスは正門を出て、右の道を走った。

早朝ランニング1

2010.05.19 (Wed) Category : memo

早朝のシュヌーシア寮。生徒達はまだ夢の中。
シンとした廊下を歩いている生徒が一人居た。
高等部三年で生徒代表のクラウスである。
これから日課のランニングに出かけるのだ。寮の玄関に来ると、そこに座っている生徒が居た。
「おはよう、クラウス」
高等部二年のテオだ。パジャマ姿である。
「今朝も行くのかい? 早朝ランニング」
「ああ。ところで、テオ。お前はどうしてこんな時間に起きている?」
「今日は早くに目が覚めたから、貴方のランニングウエア姿を愛でてから、もう一眠りしようと思ってね?
ああ、今日はターコイズブルーのウエアなのだね。凛々しいよ。夜の海に輝くマツサカウオみたい」
「俺のことは愛でなくていい」
「そう言えば、クラウスはいつも、どの辺りを走っているの?」
「幾つかルートはあるが。今日は学院の裏側にある丘の上まで行って帰ってくるコースを走る。
聖アルフォンソ島いちの朝陽が見られる丘なんだ」
「ほう。それは素晴らしい。良いコースを発見したねえ」
「いや、このコースは俺が見つけたものじゃない。貰い物だ」
「ランニングコースを貰ったのかい? なんて素敵なプレゼントなのだろう。その話、もっと詳しく聞きたいな」


当時、クラウスは高等部一年。学院に入学した直後の話だ。
入学初日は色々あり、あっと言う間に一日終わった。
翌朝、クラウスは早朝に目覚めた。
祖国ドイツとの時差の影響で、少し眠たかったが、潔くベッドから出て身支度を始めた。
ドイツに居た時は、早朝ランニングをする習慣があった。
この島に来ても、可能であればランニングを続けたいと希望していた。
生徒手帳に記載されている校則は既に熟読済み。
夜間については、外出は原則禁止(届け出があれば外出可)という記載があったが、
早朝の外出については特に書かれていなかった。決まりはないということだろうか。
そこがはっきりしないと、早朝ランニングはできない。
昨夜のうちに確認しておけば良かったのだが、過ぎてしまったことは仕方がない。

「早朝ランニングをしてもいいかって? お前、それマジで言ってんの!?」
「素晴らしいことだね、クラウス! なんて健康的な爽やか青少年なのだろう!」
「義務でもないのに、朝っぱらから走りたいとか」
「シュヌーシアで、そんなこと言ってきたの、クラウスが初めてじゃないかなあ?」
「クラウスって、走るのそんな好きなの?」
「つーか、身体痛めつけるのがスキなタイプ?」
ここはシュヌーシア寮のダイニングルーム。
朝食時に、早速、先輩達に聞いてみたところ、散々な感想(大袈裟な賞賛も含む)が寄せられた。
しかも、「早朝ランニングは可能か」という質問に対する回答がひとつもない。
「あの、それで、早朝の外出は可能なんでしょうか?」
寮生達は顔を見合わせていた。
「別にイイんじゃない?」
「だよな。ダメって生徒手帳に書いてないんなら」
「他の寮では、走ってる奴も居るんじゃなかったっけ?」
「あー、走りそうな奴居るよな、何人か」
「別に規則破りでも黙っててやるから、走ってこい、走ってこーい!」
この寮には正確な情報を持っている生徒が居ないらしい。
そこでクラウスは生徒代表のジブリールに確認することにした。
放課後、彼が住むアルファルド寮に行った。
寮内に入ったら、何故かオウムが飛んでいて驚いたが、
その後、生徒代表には会えて「もちろん構わない」と難なく許可を貰えた。
ジブリール曰く、これまでも早朝の走り込みをしていた生徒は居るそうだ。
生徒代表からも許可された。翌朝から早速始めよう。
明日着るランニングウエアを用意してから、眠りについた。


マジプラス+@アイヴィー4

2010.05.13 (Thu) Category : memo

後日。##NAME1##が全快した頃に飲み会の開催が決まった。
メンバーは##NAME1##、アイヴィー、ソクーロフ博士の三人。
「##NAME1##、明日は来てくれるんだろう?」
はい、と答えた。
飲み会前日、##NAME1##は携帯電話で博士と話していた。
保健室の電話番号を知ってからというもの、断続的ながらも博士との電話は続いていた。
博士と電話したことは、アイヴィーには伝えなかった。いじけられるのが明白だからだ。
アイヴィーに知られたら、いい顔はされないと解っているのに。
あの低い声が聞きたいと思っている自分が居て、
何かと理由を付けては保健室に電話をしてしまう。
まるで、中毒性の高いクスリを欲するように、博士の声を求めてる。
いけないことだと知りながら、携帯電話を手にしてしまう。
「明日、久し振りに##NAME1##と会えるんだね。楽しみにしているよ」
明日、博士と会える。そう思うだけで胸が苦しかった。


「じゃ、カンパイしよ! せーの、カンパーイ!」
飲み会は旧市街のカフェバーが会場となった。
四人がけのテーブル席。##NAME1##から見て、隣がアイヴィー。向かいに博士が座っていた。
最初の10分くらいは、博士と目が合うと思わず逸らしていた##NAME1##だったが、この三人で飲むことは、とても楽しかった。
生徒達の話から始まり、新市街にできた新しい店の話、
和食や日本文化について、明日から使える心理学入門講座、
アルフォンソ島あるある、ソクーロフ博士のすべらない話など、話題は尽きなかった。
まるで学生時代からの友人同士で飲んでいるかのような飲み会だった。
「俺、ちょっとトイレ行ってくるねー」
アイヴィーが席を外し、##NAME1##は博士と二人きりになった。
博士はグラスや煙草に口付けるだけで、話しかけてこなかった。
二人の間を無言の時が流れる。##NAME1##は変に緊張してしまい、博士の顔を見上げることもできなかった。
テーブルの端にあるメニュー表を手に取ってみたりする。
##NAME1##の一挙一動を観察する視線を感じながらも、メニューを熟読するフリをしていた。
そんな演技をしていたせいか、クスリと笑われた。
「##NAME1##」
名前を呼ばれただけでビクリとした。
「アイヴィーが戻ってきたら、今宵はお開きにしよう?」
##NAME1##は少し拍子抜けだった。
「今日は##NAME1##が居るから、とても有意義な夜だったよ、ありがとう。
良ければ、また飲みに行かないかね? 今度は、私と二人で」
博士は微笑を湛え、「詳細については、また改めて誘うよ」

アイヴィーが帰ってきた。
「あれ? ##NAME1##ちゃん、どーしたの? 顔赤くして。酔っちゃった?
あっ! ソクちゃんが##NAME1##ちゃんに、なんかヘンなこと言ったんじゃないでしょーね?」
「まさか。お前の寝相について話していただけだ」
「ね、寝相って!?」
「アイヴィーは丸まって眠るクセがあるだろう? とな」
「ちょ、あんた、##NAME1##ちゃんの前で何言っちゃってんの!?
ご、誤解を招くよーなこと言うなって!」
「誤解? 保健室へ昼寝に来るのはお前だろう?」
「あ、なーんだ。そーゆーイミね」
「どういう意味だと思ったんだか。さあ、そろそろ引き上げるぞ」

##NAME1##が思っていたより、少し早めのお開きとなった。
店を出ると、二台のタクシーが待っていた。
博士が乗る車と、アイヴィーと##NAME1##を乗せる車だ。
「じゃー、ソクちゃん、またあしたー」
「ああ」
博士は背を向ける前に、##NAME1##に視線を送った。
暗に「また今度」と言うかのように。

##NAME1##はアイヴィーと同じ車に乗り込む。
旧市街を抜け、タクシーは海沿いの道を走っている。
後部座席に居るアイヴィーは。ゴキゲンで隣の##NAME1##に話しかける。
「今夜は楽しかったねー。また三人で飲みに行きたいなー」
##NAME1##は、そうだね、と相槌を打ちながら、アイヴィーが居ないほうの窓を見た。
暗い海の上には半月が浮かんでいた。
距離は遠くても、月は、ひっそりとタクシーを追い駆けてくる。
月は##NAME1##を追い越せない。けれど、##NAME1##を見逃すこともない。
##NAME1##のあとを追うように、欠けた月は付いてきた。


fin

マジプラス+@アイヴィー3

2010.05.09 (Sun) Category : memo

##NAME1##の手には一枚のメモ。
この番号にかければ、博士と話せる。これからいつでも。今すぐでも。
アイヴィーが帰ってくるまで、どんなに早くても30分はかかる。
博士に昨日のお礼を言わなくちゃ。そう思い、##NAME1##は携帯電話を手にした。
番号を押しながら、少し緊張しているのに気付いた。
最後の数字まで押したあと、携帯電話を耳にあてる。
コール音に耳を澄ませ、相手が出るのを待つ。
「ソクーロフです」
博士の声だ。テレビ電話で話す時と違って、彼の低音がダイレクトに耳を刺激する。
一瞬遅れて、##NAME1##は名乗った。
「君か」
博士の声が少し優しくなったように聞こえた。
「早速電話してくれたんだね、ありがとう。
声は元気そうに聞こえるが、今日の体調はどうだい? そう。良かった」
##NAME1##は昨日のお礼を言った。
「こちらこそ、ありがとう。
元気になった君の声が聞けて、医師になって良かったと思えたよ。
――いや、すまない。ところで、アイヴィーは仕事に行ったのかな?
やはり休んだか。そうなると、君は彼が居ない間に、私に電話をかけてくれたんだね?」
##NAME1##は黙ってしまう。
「##NAME1##? どうして今、罪悪感を感じたんだい?」
言い当てられた。
「昨夜の礼と体調が回復したことを報告する為に電話してくれたんだろう?
君が気に病むようなことは何も無い筈。それとも、他に話したいことがあるのかな?」
##NAME1##は言葉が出てこない。
「私には守秘義務があるのを忘れたのかい?
君から聞いた話は、例え、君の夫であっても伝えないよ」
どうして自分は博士に電話をしているのだろう。
昨夜のお礼を言いたかったのは間違いない。だけど、本当にそれだけか。
「やあ。良いよ、そこに座りたまえ」
博士の声が若干明るめに変わった。
「生徒が来たから、すまないが、今日はこれで失礼させて頂いても良いかな?」
##NAME1##は少しほっとしつつ、はいと答えた。
「私は大抵ここに居るから、また私と話したくなったら、いつでも電話をかけておいで。
風邪は治りかけが大切だ。今日は多めの水分補給を心がけ、
夜は、なるべく早く休むように。いいね?」
解りました、と言って電話を切った。
携帯電話をテーブルの上に置くと、大きな溜め息が出た。心臓の音が早い。
とりあえず、忘れないうちに、保健室の電話番号をアドレス登録しておこうと思った。
再び携帯電話を手にする。発信履歴から今かけた電話番号を選択する。
あとは『登録』のボタンを押すだけなのに、そこで、##NAME1##の手が止まった。
この番号を携帯電話に覚えさせて本当に良いのだろうか、という考えが浮かんだのだ。
頭の中で、先程聞いた博士の声が再生される。
――君が気に病むようなことは何も無い筈――
その通りだ。知り合いの医師に繋がる電話番号を登録することの何が悪いのか。
けれど、この些細な行動ひとつで、何かが狂い始める予感がするのだ。
携帯電話を握ったまま、どのくらいそうしていただろう。
タンタンタンと軽快なリズムで、螺旋階段を上がってくる音がした。
「##NAME1##ちゃん、ただいまー!」
アイヴィーの声が聞こえるのと同時に、##NAME1##は『登録』ボタンを押していた。

マジプラス+@アイヴィー3

2010.05.09 (Sun) Category : memo

##NAME1##の手には、一枚のメモ。
この番号にかければ、博士と話せる。これからいつでも。今すぐでも。
アイヴィーが帰ってくるまで、どんなに早くても30分はかかる。
博士に昨日のお礼を言わなくちゃ。そう思い、##NAME1##は携帯電話を手にした。
番号を押しながら、少し緊張しているのに気付いた。
最後の数字まで押したあと、携帯電話を耳にあてる。
コール音に耳を澄ませ、相手が出るのを待つ。
「ソクーロフです」
博士の声だ。テレビ電話で話す時と違って、彼の低音がダイレクトに耳を刺激する。
一瞬遅れて、##NAME1##は名乗った。
「君か」
博士の声が少し優しくなったように聞こえた。
「早速電話してくれたんだね、ありがとう。
声は元気そうに聞こえるが、今日の体調はどうだい?」

「そう。良かった」

「こちらこそ、ありがとう。元気になった君の声が聞けて、医師になって良かったと思えたよ」

「いや、すまない。そう言えば、アイヴィーは仕事に行ったのかな?」

「やはり休んだか」

「そうなると、君はアイヴィーが居ない間に、私に電話をかけてくれたんだね?」

「##NAME1##? どうして今、罪悪感を感じたんだい?」

「昨夜の礼と体調が回復したことを報告する為に電話してくれたんだろう?
君が気に病むようなことは、何も無い筈。
それとも、他に話したいことがあるのかな?」

「##NAME1##、私には守秘義務がある。君から聞いた話は、例え君の夫であっても伝えないよ」

マジプラス+@アイヴィー2

2010.05.09 (Sun) Category : memo

翌朝。ベッドの中で##NAME1##は目を覚ました。
段々見慣れてきた風景。ここはアイヴィーと##NAME1##の自宅である。
博士に会う夢を見たような気がする。
どんな夢だったか思いだそうとすると、途端に光景が霧となってしまった。
しかし、アイヴィーと結婚したのに、他の男の人を夢に見るなんて。
とにかく起きあがろうとしたが、いつもより身体が重い気がした。
「あ、起きたんだね、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーがやってきた。
「具合どう? あ、そうだ。熱は?」
ペタと額と額が触れ合う。
「うん、下がったね。さっすがソクちゃんのおクスリ」
##NAME1##が「博士?」と呟くと、アイヴィーは少し驚いた様子だった。
「##NAME1##ちゃん、覚えてないの? 昨日のこと」
あまりはっきり覚えていない。
アイヴィーの話によると、昨夜は大変だったらしい。
バーから家に帰ってきたが、夜中、##NAME1##が発熱しているのにアイヴィーが気付いた。
当時プチ・パニック状態に陥っていたアイヴィーは、真夜中にも関わらず、思わずソクーロフ博士に電話。
更には、夜の道を車で飛ばして、博士を家まで連れてきたというのだ。
結局、##NAME1##は軽い風邪だったようで、投薬して症状も落ち着いたので、
明け方、アイヴィーは博士を、教職員の宿舎『メルキュール館』まで送り届けた、らしい。
それほどのドタバタ劇があったというのに、##NAME1##の記憶には、何故か残っていない。
ただ、博士の夢を見たような見ていないような、といったおぼろげなものでしかなかった。
覚えていないのは、当時、熱があったからだろうか。
「##NAME1##ちゃん、食欲はある? なんか食べれそう?」
アイヴィーの顔を見て、##NAME1##はあれと思う。
今日だって彼は仕事の筈である。時計を見ると、とっくに出かけている筈の時間だった。
仕事はどうしたの、と聞いた。
「休んだよ。ダメモトでクロちゃんに『今日休んでもイイ?』って聞いてみたらイイって」
クロちゃんとは副司令官のラインハルト・クロイツさんのことだろう。
##NAME1##は一度だけ会ったことがある。
軍出身だけあって礼儀正しい人だったが、やや慇懃無礼なかんじでちょっと怖いくらいだった。
「休みたいって言ったら、クロちゃんにはイロイロ言われちゃったけどね」
大丈夫なの、と##NAME1##が聞く。
「ヘーキ、ヘーキ。俺一人居なくたって、クロちゃんが居れば問題ナシ」
##NAME1##が心配したのは、副司令官に言われたイロイロの部分だ。
そうじゃなくて、と言おうとしたが、咳が出て言葉にならなかった。
「ああ、##NAME1##ちゃん! まだ熱が下がっただけなんだから、今日は無理しちゃダメ!
ソクちゃんも安静にしてなさいって言ってたよ? あ、そだ。コレ」
一枚のメモを渡された。
「保健室の電話番号。ソクちゃんから預かったんだ。これからも何かあったら電話するようにって」
ボールペンで書かれた数字。おそらく博士の直筆だろう。
「あ、それからね、##NAME1##ちゃん。今日は俺が料理とか全部やるから」
いいの、と##NAME1##は聞いた。
「当たり前だよ。今日の##NAME1##ちゃんは、安静にして、早く元気になるのがお仕事なんだから」
彼は長く一人暮らしをしていたし、デッドプリンスのおかげで料理もできる。
家事全般を一人でこなせる旦那様は、こういう時とても心強い。
その朝、彼の言葉に甘えて、##NAME1##は、彼が作ってくれた朝食を食べた。
美味しい朝ご飯を食べたら元気が出てきた。安静にしている必要もなさそうなくらいだ。
「よしっ。じゃあ俺、ちょっと買い物してくるよ。##NAME1##ちゃん、なんか食べたいものある?
俺に作れるものなら何でも作るし、あ、フルーツとかのほうがいいのかな?」
普段から気を使ってくれる人だが、今日のアイヴィーは特別優しかった。
薬のおかげで、もう体調もほぼ回復しているし、そこまで大事に扱って貰わなくてもいい気がする。
けれど、アイヴィーはなんだかはりきっているようだし、
ここで「もう元気になったから」と言ってしまっては、仕事を休んでくれた意味がなくなってしまう。
今日は一日、彼に甘えさせて貰おう、と決めた。なんだか学校をズル休みしているような気分だが。
「じゃ、行ってくるね」
アイヴィーは買い物に出かけていった。

マジプラス+@アイヴィー1

2010.05.09 (Sun) Category : memo

ある日。
##NAME1##は、仕事帰りの彼と旧市街で待ち合わせて、外で夕食にしようという話になった。
彼とはもちろん、先日結婚したアイヴィーのことである。
一緒に暮らし始めてよく解ったが、警備責任者という彼の仕事は本当に大変なものだった。
勤務時間が終わっても、休日であっても、何かあれば容赦なく彼の携帯電話は鳴る。
必要な指示を出すだけで済むこともあるが、「ちょっと顔出してくるわ」と仕事に向かうことも少なくなかった。
そんな中、昨日の夜に##NAME1##は言われたのだ。
「明日は早く上がれそうだから、夜、ちょこっとデートしよ?」と。

待ち合わせ場所は旧市街の広場。
##NAME1##は早めに来たのだが、それより早くアイヴィーは着いていた。
「随分早かったね」と言うと、アイヴィーは笑っていた。
「##NAME1##ちゃんに早く会いたいから、仕事放り出して来ちゃった。ひひひっ」

その後、アイヴィーと##NAME1##が気に入っているバーに行った。
ここは独身時代からアイヴィーが通っていたお店で、名前は『ネモフィラ』という。
今日はアイヴィーが車で来ているので、##NAME1##もお酒は飲まなかったが、
アルコールがなくても十分楽しい夜だった。飲んでいないのに、少し気持ちがふわふわしている。
素敵なバーでアイヴィーと一緒に居られるからだろうか。
「あれ? ##NAME1##ちゃん、もしかして、ちょっと寒い?」
無意識に腕を抱いていたら、そう聞かれた。確かに肌寒い。
「そっか。ちょっと待ってて」
アイヴィーは片手を挙げて、ボーイを呼ぶ。
すると、リングのピアスをしている男の子が来た。
もう##NAME1##とも顔馴染みのボーイで、カールくんという子だ。
人懐っこく、お客(特に女の子)と話すのが大好きなタイプ。
空いたグラスを出しながら、アイヴィーはこう頼んだ。
「コレと同じのもう一杯、あとちょっと室温上げて貰ってもイイかな?」
ボーイはアイヴィーと##NAME1##を見比べて、##NAME1##のほうを見た。
「あっ、##NAME1##おねーさん、寒かった? ごめんね、すぐに温度上げてくるから」
たたたっと店の奥に走っていった。

「##NAME1##おねーさん?」
暫くすると、ボーイのカールくんが戻って来た。
「どう? 寒くなくなった?」
##NAME1##は頷き、お礼を言った。
「また寒かったり暑かったりしたら、すぐオレに言ってね?
あと、これはオレからおねーさんにプレゼント。カールくん特製スペシャルココア~!
あ、ちなみにマスターにはナイショの方向で♪」
バチンとウインクされたと思ったら、カールくんが顔が近づいてきた。
「オレのラブがいっぱい入ってるから、これで温まってね?」
「カ~~ル~~」
アイヴィーが唸る。カールくんはひょいと離れた。
「なんだよ、アイヴィー。オトナのくせにヨユーないなー。
結婚したのにそんなに嫉妬深いんじゃ、##NAME1##おねーさんに嫌われちゃうぞ~?
もっとドーンと構えてろよ、ドーンと。
例えばほら『残念だったなあ、ボーズ。この女が惚れてんのは俺だけなんだよ』くらい言えって」
「それがオトナのヨユーなのか?」
「じゃー、ごゆっくりー」
風のように去っていき、また他のテーブルへお喋りに行った。
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